「宝石箱 - The Jewelry Box」では、日本美術に影響を受けた西洋のアーティストの女性のポートレートを中心に、油彩画や日本画をAIで生成し、TouchDesignerでジェネラティブにアニメーションさせています。本展示に向けて、√K Contemporaryとの意見交換の中で「日本らしさとは何か?」という問いが、心に強く湧きました。
私は東京で生まれて育ちました。物の多い家で育ったため、母の和風の持ち物や子供の頃のおもちゃなど、日本の物も西洋の物も数多く混在していました。普段は洋服を着て過ごし、特別な時に着物を着せてもらい、とても嬉しかったのを鮮明に記憶しています。幼少期に好きだったアニメのキャラクターは、金髪に青い目で、日本人にはないようなスタイルをしていました。そんなアニメのキャラクターやドレスを着たお姫様の絵を描くことが、私の楽しみでした。幼少期から日本文化も西洋文化も身近な存在だった私にとっては「日本人である」という感覚よりも「個人である」という感覚の方が強いように感じます。
AIで画像を生成する際は、オリジナルの絵画を見ながら画像を最終的に選んでいきます。その工程は、アニメのキャラクターを描く時と似ていると思います。私はアートのキャリアを油絵からスタートさせているので、AIが生成するテクスチャやリアルな油彩画の表現には、いつも驚きや楽しさがあります。また、西洋のアーティストに影響を与えた日本美術も、アニメや漫画のルーツを感じ非常に興味深いものでした。オリジナルが分かるものもあれば、オリジナルからは離れて、違う創作物になっているのを見るのは非常に楽しい工程です。
「日本文化」というと美術の分野では日本画、アニメ、漫画をモチーフにした作品を連想する人も多いのではないでしょうか。過ごしてきた時代、環境、性別によっても日本文化の解釈は人それぞれに変化するものだと思います。そして、それぞれの解釈が正解であり、その人の宝物なのではないかと思います。多様な文化や物事に対する解釈が存在し、それを受け入れて変化し発展している在り方がとても日本らしいのではないかと私は感じています。
Credit
主催:√K Contemporary
展示用ディスプレイ制作:NEORT